けていただかなければ今頃、私はどんなになってしまっていたか、考えてみるだけで怖い気がします。ですから私。奥さまがお怒りになるようなことは、決していたしません。それだけは信用して下すっていいと思います。
しず お前は一体何の話をしているのです。
けい いえ、私……何の話をしようと思ったんでしょう。ただ……御免なさい。今日は何だか少し変になっているかもしれません。
しず 私はいつだってお前を信用しています。お前と私とは、同じ月の同じ日に生れたんですもの、お前を疑うことは、私自身も信用のならない人間ってことになりますからね。(笑う)けどお前も若いし家には若い男の子が二人もいるし、まァ、お互に間違いのないうちにと思って急にこんなことをいう気になったのですがね……。
けい ……。
しず といって何も、むずかしいことじゃありませんよ。もう、大分前から考えてはいたことなんだけど……お前も女のことだし、何《いず》れは何処かへ身を堅《かた》めなくちゃならないんだけど……そういうことについて、別に相談する所も、親身になって下さる所もないのでしょう。
けい ……。(うなずく)
しず それじゃ、どう、自分の誕
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