叔父さまの御用だの、ふみ子お嬢さまの御用だのいろいろあるんですもの、御免なさい。
栄二 おいおい。ほら、ばたばたするから櫛が……(と拾って)お、これはあの時の……(といいかける時、けいは急にそれを奪いとり、走って入ろうとする。丁度出て来たしずと危くぶつかりそうになる)
けい あ、御免なさい。
しず どうしたんです。家の中でそんなに走ったりしちゃいけませんね。(といいながら栄二の方をみる。栄二ちょっと照れて外の方を向く)
けい すみません。今度から気をつけます。(と、ゆきかけるのを)
しず あ、ちょっと……。
けい はい。
しず (栄二に)私、けいちゃんと二人だけで話したいことがあるからちょっとの間、お前向こうへ行って頂戴な。
栄二 ええ。(出て行く)
しず さあ。もっとこっちへいらっしゃい。
けい (恐縮して)はい。
しず そんなに堅くならなくてもいいんですよ。まあそこへお坐りなさい。
けい はい。
しず なんですねえ。そんなに、兵隊さんのようにかしこまっちゃ、お話もなにも出来やしないじゃありませんか。
けい 奥さま。私、奥さまから受けました御恩決して忘れてはいませんのです。奥さまに助
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