かったつもりでいても本当にわかってるんだかわからないんだか、誰にもわかることじゃありませんから。
ふみ 何いってらっしゃるの。あなたのいってることの方がよっぽどわからないじゃありませんか。
精三 や、どうも。ははは。(と縁へ坐ろうとする)
ふみ あら、駄目よ、そんなところへ坐っておしまいになっちゃ。私のお手伝して下さるんじゃなかったの。
精三 あ、そうだっけ。
ふみ 後でけいちゃん、手があいたらお部屋まで来て頂戴。バケツと雑巾《ぞうきん》持ってね。押入れの虫干しするんだから。
けい はい。
ふみ じゃ叔父さま又後で。精三さん。
精三 う、うん。じゃ、御免なさい。(二人去る)
章介 (二人を見送って)人間という奴は、何かやると必ず間違いをしないではいられないらしいな。まるで間違いをするために何かするみたいだ。
けい あの、精三さまは、総子お嬢さまの旦那さまになられる方じゃないのではございますか。
章介 そんなことは俺は知らん、当人達だって、恐らくわかっておらんことだ。しかしこの頃、ちょいちょいふみ子とつながって歩いているところを見るとどうかね。
けい ふみ子お嬢さまも一体どういうおつもり
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