章介 いけませんよ。やらせるつもりなら思いきってやらせなさい。仕事が人間を鍛えてくれるでしょう。若《も》し仕事に負けて途中でへたばるようなら、それはそれで仕方がありません。
しず まあ、お前は随分冷めたいことをいいますね。
章介 伸太郎をお呼びなさい。私から申渡してやりましょう。
しず そうですね。いずれ一度はしなくちゃならない話です。それじゃ、もう出かけたかどうかちょっとみてきます。(しず去る)
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間。けい。
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けい 遅くなりました。
章介 あ、どうも……。(受取って呑む)うまい。
けい あのう。
章介 ん?
けい 御旅行は、明日お発《た》ちになるんでございますか。
章介 いや、明日はちょっと無理だ。明後日だな。どうして?
けい お洗濯物を。
章介 あ、そうか、すまんな、たのむよ。
けい 明日の朝でもお届けしましょうか。
章介 そうだな。いや、明日の晩もう一度来るからその時もらってゆこう。
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賑やかな笑い声がして庭から
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