(頷《うなず》く)
伸太郎 そんな戦争で働いて死んだ人の子供を、何だってひどい目に合わせるんだ。
けい 知らないわ。きっと私を引き取りたくなかったんでしょう。他に親類がないので、仕方なしに育ててくれたんだもの。
伸太郎 なんてひどい奴だろう。
栄二 ……うん。ひどいね。
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三人、一寸考えこんでしまう。又軍歌の声。章介、いい気嫌で入ってくる。後からしず。
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章介 どうしたんだ二人共。折角のお祝いの席を外してしまう法があるものか。さあ早く来い。おや、お客様かね。
伸太郎 いや。お客様ってわけじゃないんだけど……。
章介 おいおい隠したって駄目だぞ。こう現場をおさえられてしまってはもう手遅れだ。姉さんあんたはいい子だいい子だなんていっているが、油断もすきもありませんぞ、ちょっと目を離すとこの有様です。
栄二 そうじゃないんだよ。おじさん、この人は僕達まるで知らない……。
章介 こら、まだしらっぱくれるのか。知らない人を座敷に上げて話をしてる奴がどこにある。
伸太郎 いいえ。ほ
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