あるのをみると好もしそうに手にとり、髪にさしてみる。栄二入ってくる。
両方で驚く。
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栄二 あああ、驚いた。
けい ……今晩は。
栄二 ああ……誰、君。
けい 私……布引けい。
栄二 ふみ子の友達かい。
けい ……い……いいえ。
栄二 それじゃ総子姉さんの?
けい ……そうじゃないわ。
栄二 じゃあ……何しに来たの君……。
けい ……私……私……。
栄二 変な人だな。一体何処から入って来たのさ。
けい あすこの、お庭の木戸が開いてたものだから……。
栄二 ああ、先刻提燈行列を見に出るので開けたんだ。(思い出したように探す)おや、ないぞ、君、知らないか、この辺に貝細工のついた櫛が……。
けい (反射的に頭をおさえる)
栄二 (気がついて)あ、おい。それをどうするんだ。
けい 御免《ごめん》なさい。御免なさい。私、私、持ってくつもりなんかなかったのよ。ただ、こんな綺れいな櫛自分でさしてみたらどんなにいいだろうと思って……。
栄二 おい。この櫛はお前なんかにささせるつもりで買って来たんじゃないぞ。お母さんに僕が初めて買って
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