て1字下げ]
けい 駄目じゃありませんか、あなた。(と椅子の所へつれてゆき)何処がお苦しいんです。此処ですか。帯をゆるめましょうか。よろしい? きよ! 井上さんいませんか。
伸太郎 (止めて)けい。いいんだ。大丈夫だよ。
けい そんなこと仰言しゃったって、これじゃあなた。きよ! あなた、ちょっとそのままにしていらっしゃいね。今お医者を。
伸太郎 (けいの手を引っ張って)いいんだ。いいんだ。このままにしていよう。けい、お前と、二人で、こうしていよう。な、じっとしていてくれ。お前と、二人で……。
けい あなた。あなた! あなた!
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ](溶暗)
第五幕の二
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堤家の焼け跡。
第一幕の一と同じ瞬間。栄二とけい一幕の一と同じ型で立っている。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
栄二 十……何年振りでしょうね、お変りがなくて結構でした。
けい ……あなたこそ……御無事で何よりでした。
栄二 (ゆっくりさっきの切石の方へ歩き出しながら)体は長い放浪生活で、相当鍛えてありましたからね。而《
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