なことをやってみるらしいね。
あさ子 収さん? 建築の写真なんか集めてるのよ。
真紀 文学部なんだろう。
あさ子 ほんとは芝居の勉強がしたいんだって。
真紀 芝居って。あの芝居かい、歌舞伎やなんかでやっている。
あさ子 さあ、あたしにもよくわからないんだけれど。
真紀 変なものをやるんだね。他にすることがありそうなものを。
あさ子 だって、そりゃ、仕方が無いと思う。母さん嫌い? あのひと。
真紀 好きさ。いい人だもの。けどやってることはね。
あさ子 文学?
真紀 あんまり好きじゃないね。
あさ子 あたし達は解らないのよ。家じゃ、みんな化学なんだもの。
真紀 それで、あなたにも始終《しょっちゅう》そんな話をするの文学とか、芝居とか。
あさ子 ちっともよ。あたしがそんな話をし出すと妙な顔をするのよ。
真紀 解からないときめてるんだね。
あさ子 きまりが悪いのよ、きっと。赧《あか》い顔するのよ。
真紀 何考えてるんか、わからないね、若い人って。それじゃ、いつも、どんな話をしてるの?
あさ子 話なんてしやしない。
真紀 でもピアノのお稽古が済んだら直《す》ぐ帰っちまうってわけじゃないでしょう。
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