みごとな女
森本薫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)豪奢《ごうしゃ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)大概|傍《そば》にいる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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[#台詞はすべて、折り返し2行目から、天より1字下げ]

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  人
あさ子
真紀



豪奢《ごうしゃ》と言うのではない、足りととのった家庭。人形をかざったピアノが一つ、坐り机が一つ、縁先に籐椅子が二つ、卓。みるところ若い女の部屋らしい。
六月。
誰もいない。
[#ここで字下げ終わり]
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あさ子。二十四。和服。身体つきは大柄で少し肥っているが美しい。時々片手を上げて指先で両の眉を内から外へ撫でつける癖がある。話をさせても他人の調子には頓着《とんちゃく》なく、緩《ゆっく》り句切って云うようなところがある。外出から帰ったところ。すこしの間部屋の真中に立って周囲を見まわし、思い出したようにピアノの前にいく。
ちょっとためらった後、ショパンの作品九番の第二の夜曲をさぐりさ
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