てみるのよ。野田さんやなんか、どうしてるかしらん、なんて。
真紀 お嫁入りなすった方かい。
あさ子 医学部の研究室にいるひとよ。
真紀 ――。
あさ子 あたしもしばらく、あそこにいたわね。あたしが家へ帰ることにきまったので、代りにあのひとが行ったのよ。
真紀 あなたは、今でもやっぱり、あの、理化学研究所に入らなかったことを、何とか思ってるんじゃない?
あさ子 ――。
真紀 そりゃ、惜しいには惜しいだろうけど、先生方もあんな風に言って下すったのだし。
あさ子 (笑って)母さん、あたしもう何とも思ってやしない、それなら。
真紀 そう、そんならいいけど。
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間。
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あさ子 此の間、慥えた人形ね。収さんが持って帰ったのよ。あれが一等出来が悪いんだのに。
真紀 どうして、そんなのを持って帰るのだい、あの人。
あさ子 しらないわ。変な恰好《かっこう》してるのよ、そりゃ。他のと取り換えるからって言うのに、これでなくちゃ厭だってきかないの。
真紀 変梃《へんてこ》な所はあなたの感じが出てるんだろう、きっと。
あさ子 ひどいわ、母さん。
真紀 あれで、いろん
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