子 (わけわからずに笑う)
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間。
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真紀 もう出来るの? それ。(あさ子の持っている人形を頤《あご》で示す)
あさ子 も少し。
真紀 今、何処をやってるの?
あさ子 裾廻《すそまわ》しんところ。
真紀 此の間中のと、また違ってるの?
あさ子 ――。
真紀 ねえ。
あさ子 え?
真紀 また違うのをやってるのかい?
あさ子 そら、とうとう間違えちゃった。母さん、いろんなこと言うから、ほら(示して)こんな。
真紀 だってあなた、さんざんひとに喋《しゃべ》らせといてちっとも聴いてやしないじゃないの。
あさ子 だから、何よ。なに言ってたの、今。
真紀 つまり、ね、あら厭だ、つまりなんて話じゃなかったのよ。少しは真面目に他人《ひと》の話を聴くものよ。
あさ子 真面目に聴いてるわ、あたし。でも、何の事だか、訳が分らないんだもの、これ以上真面目になんてなれやしないでしょう。
真紀 だからさ、一体どうする考え? そんなに次から次へお人形の着物ばかり慥《こしら》えて、お人形屋でも出すつもり?
あさ子 出来たら、そうしたいわ。
真紀 そんなこと言って、母さんを
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