そう言う奴は。(笑う)
真紀 随分いるじゃないの、そう言うのが。
収 そりゃ仕方がないな。それに悪者だとか悪運だとか言う奴は気を配ってる人ほどつかまり易いんじゃないんですか。
真紀 理屈を言ってるのよ、あなたは。
収 まあ、そんなに心配しなくっていいでしょう。そんな閑に、そろそろいいお婿さんでも探した方が実際的じゃないの、おばさん。
真紀 貰い手があればねえ。
収 ありますよ、いくらでも。おばさんの方で惜しがってるだけじゃないの。
真紀 お裁縫ひとつさせてもね、あたしが気をつけないで放っとくと、袖口迄縫いつめてしまうの。そんなのよ。
収 まさか。
真紀 と思うでしょ。嫁にやる。先様《さきさま》に厳しい御両親でもあれば、直ぐ出戻りだものね。そうなると笑い事じゃ済まない。
収 そういう所へやればいい。それを承知の……と言うより、そう言う所を買ってくれる。
真紀 ないでしょう、そんなの。生煮えの御飯を食べさせられてにやにやしてるなんて……若《も》しあったとしたら、少し気味が悪いわね。
収 そんなこと言ってて、じゃ一体どうするんです。放っといたらだんだん遅くなるばかりじゃありませんか。
真紀 
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