さ、だからさ……。
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間。
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真紀 あれで、理化学研究所だけは、当人よくよく這入《はい》りたかったらしいのね。
収 そうでしょう、そりゃ。
真紀 何か言って? あなたに。
収 いいえ。
真紀 口を合わせてるようね。
収 ?
真紀 あなたが文学の話をするのかって訊いたら、やっぱり、いいえ、って。
収 だってほんとだもの。気になるんですか、それが。
真紀 ならないこともないの。あなたなんかそう思うでしょうね。這入りたければ、入れてやればいいって。
収 僕はやはり、これでいいのだと思うけど。
真紀 私達はどうしていいのかわからないの、本当のところはね。みんなあのひとが可愛くって仕方がないのよ。だから、あの子の好きにさせてやりたくなったり、そうかと思うと、それが却《かえ》って当人の為にならない気がしてみたり。少しは親の思惑《おもわく》でも押し切るほどだったらいいんだけど。
収 一々押し切るようだったら、一層困るんでしょう。
真紀 そうかもしれない。でも、あんなのも、今時ねえ。
収 どちらにしても不足は言うか。親って勝手なもんだな。しかし、そう言えば
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