ように聞えるけれど。
収 知りません、僕は。
真紀 お話にならない、それじゃ。
収 おばさん知ってそうですね。
真紀 そうね、年のひらきだけは。
収 案外簡単なものなんだな、それじゃ。
真紀 莫迦《ばか》にするんじゃない。
収 どんなものです?
真紀 世間?
収 ええ。
真紀 世間は……
収 世間でしょう。
真紀 まあ(そうさ)。
収 苦しくって。
真紀 ふん。
収 悲しくって。
真紀 ふんふん。
収 醜くって。
真紀 ――。
収 下品で。
真紀 時々はいいこともあるさ。
収 いいこともね。それだけ?
真紀 まだまだあるねえ。追々《おいおい》分かる。
収 やっぱり、予備知識は要《い》りませんね。
真紀 追々って言うのは……。
収 要る時が来ればわかる、と言う意味でしょう?
真紀 その時が来てもわからないと言う人間は?
収 要らない人か、莫迦か、どちらかでしょう。
真紀 あさ子は莫迦の方なの?
収 前の方じゃないですか。
真紀 何もしらないでいていきなりひどい目に会わされたりすると、どうするかと思うの。そこんところよ、私の案じるのは。思い過ごしかしら、こんなこと。
収 それは悪者ですよ、
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