うって法があるかい。
あさ子 今ね、今、あんたのことを言ってたの。
真紀 あさ子。
あさ子 母さんね。あんたの悪口言ってたのよ。だから慌《あわ》ててるの。(笑う)
真紀 嘘よ、あさ子がそう言ったの。
あさ子 あら、あたしじゃないわ。自分こそ。
収 どうも大変な所へ入って来たらしいなあ。逃げ出した方が無事かな。
あさ子 大丈夫よ。そんなにいけないことじゃないの。
収 どうだか。
真紀 ほんとに、どうだかしれやしない。(笑う)
収 (あさ子に)あなただね。悪口言ったのは。
あさ子 違うったら。
収 そうに違いない。わかってるさ。
あさ子 (睨む)まあ。
収 睨んだって恐くないよ。
真紀 (あさ子に)ほら、その次は。
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収、指先で眉を内から外へ撫でつけてみせる。
[#ここで字下げ終わり]
真紀 駄目々々。たった今叱られたばかりよ。
収 へえ。それなら早くそ言って呉れるといいのに。大失敗だな。
あさ子 いいわよ。君とは今日はもう口をきかないから。
収 大変なことになったもんだなあ。(真紀に)ああ、忘れてた。おばさん、母からのことづかりものです。それでちょっと学校のかえりに
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