、俺もいよいよ後へは退かれなくなる道理だ! ただこんなことを太夫に申入れるには、誰か人をもってするのが本当かもしれないが、差当ってそれを打明けるのに恰好《かっこう》な相手も同志の中には見当らない。なに、かまうものか、場合が場合だ、面《つら》押拭《おしぬぐ》って自分で申しあげることにしよう。そう決心するとともに、彼はその日の昼過ぎから、ちょっと石町《こくちょう》まで伺候《しこう》してくると同宿の二人に断って、ぶらりと表へ出た。
急ぎ足に小山屋の隠宅まで来てみると、頭領大石は今国元へ送る書面を認《したた》めていられるというので、すぐには面会ができなかった。同じ宿に泊っている潮田《うしおだ》又之丞、近松勘六、菅谷《すがのや》半之丞、早水《はやみ》藤左衛門なぞという連中は、一室置いた次の間に集まって、上《かみ》の間に気を兼ねながらも、何やらおもしろそうに談話《はなし》をしていた。時にはわれを忘れて大きな声も出した。小平太はその中に加わったようなものの、ほかの連中は皆百五十石、二百石取りの上士《じょうし》ばかりで、三村次郎左衛門を除いては、元の身分が違うから、何となく話しもそぐわないような気が
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