四十八人目
森田草平

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)毛利小平太《もうりこへいだ》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)辻版小屋|筋違《すじか》い前

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)宗※[#「彳+扁」、第3水準1−84−34]《そうへん》
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     一

 毛利小平太《もうりこへいだ》は小商人《こあきゅうど》に身《み》を扮《やつ》して、本所《ほんじょ》二つ目《め》は相生《あいおい》町三丁目、ちょうど吉良左兵衛邸《きらさひょうえやしき》の辻版小屋|筋違《すじか》い前にあたる米屋五兵衛こと、じつは同志の一人|前原伊助《まえばらいすけ》の店のために、今日《きょう》しも砂村方面へ卵の買い出しに出かけたが、その帰途《かえりみち》に、亀井戸天神の境内《けいだい》にある掛茶屋に立ち寄って、ちょっと足を休めた。葭簀《よしず》の蔭《かげ》からぼんやり早稲《わせ》の穂の垂れた田圃《たんぼ》づらを眺《なが》めていると、二十《はたち》ばかりの女中
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