らおしおが声を懸けた。
 小平太はぎくりとして、思わず振返った。そのはずみに、手に持った白刃がぎらりと闇に光った。それが眼に入ったのか、
「まあ、あなた!」と言ったまま、おしおはいきなり飛び起きてしまった。そして、
「あなた、どうなされました? 気でも狂ったのか、そんなものを手に持って!」と、やにわに男の腕に縋《すが》りついた。
「うむ、待て、危殆《あぶな》い! 待てと言ったら待て!」と、小平太は狼狽《うろた》えながら、その手を振り放そうとした。
「いえいえ放しませぬ、訳を話してくださらぬうちは、けっしてこの手を放すことではござりませぬ」と、女はいよいよ力を籠《こ》めて、一心に武者振《むしゃぶ》りついた。
「話す話す、訳を言うからその手を放してくれ」と、小平太はようよう女の手をほどいて、刀を鞘《さや》に納めた。
「さ、早う言ってくださいませ」と、女はその刀を取って自分の背後《うしろ》へ片づけてから、男の前に膝をすすめた。「わたしというものもある身で、短気な心を出さんしたその訳を、有様《ありよう》に言って聞かせてくださいませ」
「話すと言った上は、そう言わんでも、きっと話して聞かせる」と
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