でも白刃《しらは》と白刃と打合う中へ飛びこまなければならぬ身ではないか。こんなことではならぬならぬと思いながら、思えば思うほど腕が萎《な》えるような気がして、どうにもならない。彼はただ暗がりの中にまじまじと眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みひら》いていた。
そのうちにどこかで一番鶏《いちばんどり》が鳴いた。
「もう夜が明けるのかしら?」
彼は夜着をはぐってもう一度顔を出した。が、宵《よい》まどいした鶏《とり》でもあったか、つづいて啼《な》く鳥の声も聞えなかった。
「そうだ、今のうちに決行しなければ、俺はいよいよ不義者になってしまうのだ!」
彼は一思いにがばと跳《は》ね起きて、いきなり壁ぎわに寄せておいた小刀を取るなり、すらりとその鞘《さや》を払った。そして、行灯《あんどん》の灯影《ほかげ》に曇りのないその刀身を透してみた。新刀ながら最近|研師《とぎし》の手にかけたものだけに、どぎどぎしたその切尖《きっさき》から今にも生血《なまち》が滴《したた》りそうな気がして、われにもなく持っている手がぶるぶると顫《ふる》えた。
「あなた、お目覚めになりましたか」と、不意に背後か
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