いうのだ。小平太は領承《りょうしょう》してすぐに立ち上った。
平間村までは往復八里の道である。目黒から間道を脱けて行ったが、それでも帰路《かえり》は夜《よ》に入《い》った。小平太は亥《い》の刻前にようよう戻ってきて、自分で指図をして、それぞれ片づけるものは片づけさせてしまった。もちろん、安兵衛や勘平も手伝った。で、いよいよ寝《しん》につこうとした時、そばに寝ていた勘平が、
「おい、小山田の遁《に》げた原因《わけ》が分ったぞ」と、声を潜《ひそ》めてささやいた。
「ええ?」と、小平太は思わず振返った。「それはまたどうしたというのだ?」
「先達《せんだっ》てからあの男は」と、勘平は蒲団《ふとん》の上に起きなおったままつづけた。「よく湯島の伯母の許《ところ》へ行くといっては出かけたものだ。なに、それが伯母の家でも何でもない、天神下の湯女《ゆな》の宿だとは、俺もとうから見抜いていた。だが、なにも他人《ひと》の秘密を訐《あば》くでもなし、何人《だれ》にもありがちのことだと大目に見ておいたがね、今になってみると、それがこっちの手脱《てぬか》りだったよ。で、まだそこらにまごまごしていたら、引捕まえて
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