と思いながら、「よろしい!」と言った。そして、「飛脚を頼みに行くのか」と訊《き》いてみた。
「うむ、あんまり臆病者がたくさん出るので、心外でたまらぬから、いちいち筆誅《ひっちゅう》を加えてやった」と、勘平は問わず語りに話した。(ついでながら、勘平のこの書状は、江戸における赤穂浪士の動静を知る貴重な材料として、今に伝わっている)「だが、戻路《もどり》にはちょっとよそへ廻るつもりだから、少し晩《おそ》くなるがいいか」
「ああ、ゆっくり行っておいで」
 勘平はそのまま出て行った。が、それと入れ違いに、前に出た安兵衛が戻ってきて、
「小平太どの、ひとつ平間村まで御足労を願いたい」と言いだした。
 聞けば、この宿が当夜の集合所の一つになっている。それについては、昨夜の相談では、当夜の諸道具はめいめいの宿へ持ちこむことになっていたが、やはり一部分はここへ集めておいた方がよかろうということに模様が変ったので、御足労だが、これからすぐに取りに行ってきてもらいたい。もっとも、大石殿の若党|室井《むろい》左六が仲間どもを連れて先へ行っているから、それらのものに持たせて、貴公はただ宰領してきてもらえばいいと
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