にも言ってくれるな」と、小平太は相手の顔を見ぬように、目眩《まぶ》しそうに眼を反《そら》しながら言った。「わしは、わしは討入《うちいり》の数に漏《も》れたのだ!」
「ええッ!」と、おしおは思わず身をのけ反《ぞら》したが、また気を取りなおしたように、男の前へ詰め寄りながら、「討入の数に漏れた……とおっしゃるからには、やっぱりまだわたしに未練が残って……?」
 小平太はやっぱり押黙ったまま俯向《うつむ》いていた。
 おしおは男の膝に取りついて、「わたしいわれに、大切《だいじ》の場合にあなたに後《おく》れを取らしたとあっては……わたしは生きている瀬がない……あの時も早う死のうと思ったに、あなたのお言葉に絆《ほだ》されて、生き残ったがわしゃ口惜しい! どうしよう、わしゃどうしよう?」と、おろおろ泣きだしてしまった。
「いや、そうでない、そうでない!」と、小平太はさも苦しそうに顔面神経を引釣《ひきつ》らせながら、ようよう口を切った。「この前来た時、お前に未練があって死にきれないように言ったのは、ありゃわしの嘘じゃ。わしはやっぱり自分の命が惜しかったのだ。命惜しさに、どうしても死ぬ覚悟ができなかっ
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