たのだ。おしお、堪忍《かんにん》してくれ、俺はこういうやくざな臆病者に生れついたのだ!」
おしおは思いも懸けぬ男の言葉に、ただもう訳も分らぬような顔をして、相手の顔を見返していた。
「ただ俺はこの臆病な心に打克《うちか》って、立派に死んでみせようと、どれだけ心を砕《くだ》いたことか。お前を手に懸けようとしたのも、そなたに未練があるというよりは、せめてお前でも殺したら、もう後へは退《ひ》かれぬようになって、未練なわしの心にもどうぞ死ぬ覚悟がつこうかと、それを恃《たの》みにあんな真似《まね》をしてみたのだ。が、生れついて臆病なわしには、さあ殺せと身体を突きつけられては、手も下せず、せめて大石殿に二人の仲を打明けて、こうこういう訳だと申しあげてしまったら、その打明けたということが力になって、義理にも後へは退かれまいと、またそれを恃《たの》みに帰って行った。が、明くる日大石殿に逢ってみると、大事を挙げる前日とて、そんなつまらぬことを言いだす暇もなく、すごすご戻ってきたのが破滅の原因《もと》、それからはいっそう心がぐらついて、昨日《きのう》の夕方宿を出たきり、宛もなく町中《まちなか》をぶらつい
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