でになろうとは存じませんので、一人で仏壇にお灯明《あかし》をあげていたところでした。さあ、どうぞこちらへおはいりくださいませ」
 こう言いながら、おしおは先に立って家の中へはいろうとした。
「はいってもいいね?」と、小平太は始めて口を利《き》いた。
「まあ、何をおっしゃいますことやら、あなたのお家ではござりませぬか」と、おしおは手を取るようにして男を座敷へ上げた。それから行灯《あんどん》を持ちだして、小平太の前に手をつかえながら、あらためて挨拶《あいさつ》をした。「もう二度とはお目に懸れぬようにおっしゃってでしたのに、今ごろお出で遊ばしたのは、ああ分った、お話しのことはまたぞろ日延べになったのでござりましょうね?」
 小平太は苦しそうに、ただ「いいや」とばかり頭振《かぶ》りを棹《ふ》ってみせた。
「へえ? 日延べにはならぬ。では、もう討入はすみましたかえ」と、おしおは思わず膝《ひざ》を乗りだしてたずねた。
 小平太はまた苦しげにうなずいてみせた。
「討入はすんだ! それに今ごろここへお出でになったのは?」と、おしおはいよいよ合点《がてん》が行かなそうに、男を見返した。
「おしお、もう何
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