彼は橋の上に立ち停ったまま、頭の上の北斗星を見遣《みや》った。
「そうだ、丑《うし》の上刻! それまでに宿へ帰らなければ、もう間に合わない!」
 彼は背後《うしろ》から鉞《まさかり》で殴打《どや》されたように躍《おど》り上った。
「もう何剋だか知らないが、千住の大橋から両国までは一里あまり、丑の刻までには行き着かれそうにもない。俺はとうとう時刻を逸した。俺は同盟から外《はず》れてしまった。俺は人外《じんがい》に堕《お》ちた、蛆虫《うじむし》同様になってしまった。もう明日から人にも顔は合わされない。同志は今ごろ俺を何と言ってるだろう、何と言って罵《ののし》っているだろう? 安兵衛は? 勘平は?」
 彼はよろよろと橋の欄干《てすり》に凭《もた》れかかって、両手に頭髪《かみ》の毛を引掴《ひっつか》んだまま、「そうだ、俺は時刻に後れると知りながら、わざと後れるようにしかけたのだ、わざとこんな所へ来てしまったのだ。何という俺は卑怯者だ、臆病者だ! 生れついての臆病が最後にとうとう俺に打克《うちか》ったのだ!」と呟《つぶや》いた。そして、そう呟きながら、だんだん雪の中に顔を埋《うず》めてしま
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