刻限までにはかならず戻ってくるから」と言いおいたままふたたび出て行った。
その後で、勘平と小平太とはしばらく顔を突合せていた。小平太には、何よりもこうして同志の者と向い合って、落着かぬのに落着いた顔をしているのが辛かった。時刻は一分刻《いちぶきざ》みに刻々と移って行く。いっそ早く定めの刻限が来てくれたらとも思ってみた。そうしたら、この苦しみから免《のが》れられるかもしれない。その刻限が来るのは恐ろしい。しかしそれを待っているのはいっそう怖ろしい! そんなことを考えているうちに、勘平は何と思ったのか、小平太に向って、
「おい、今日はどうして出かけないのだ?」と言いだした。「俺はこちらに縁辺もなし、訪ねてやる知人《しりびと》とてもない。ま、留守は俺がしているから、今夜が最後だ、何方《いずかた》へなりとも行ってこられい」
小平太はその言葉に救われたような気がした。で、考える間もなく、
「そうか。では、気の毒じゃが、何分《なにぶん》頼むよ」と言ったまま、そわそわと宿を出てしまった。
が、出るには出ても、小平太には別段どこへ行く宛もなかった。おしおとはもう昨日の朝「二度とは会わんぞ!」と言
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