た。で、ひととおり読経と焼香《しょうこう》がすんだ後、白銀三枚を包んで寺僧に致《いた》して、一同別席でお斎《とき》についた。それから暫時《ざんじ》人払いをした上、その席上で内蔵助から最後の打合せがあった。そして、後刻を約して散会になった。
安兵衛は八つ前に宿へ戻ってきた。すぐに小平太と勘平の二人を前へ喚《よ》んで、今日の次第を物語った上、「討入の手配はかねて覚書によってめいめいに伝えられたとおりでござる。一同は今夜|丑《うし》の上刻までに、この宿と、本所三つ目杉野十兵次どのの借宅と、前原神崎両人の店と、この三箇所へ集合することになっている。なおわれら三人のうち、横川氏は大石殿の手に属して表門へかかり、拙者と小平太どのとは主税どのの手に属して裏門へ廻ることになったから、その心得でいてもらいたい。で、それまでは格別用事もござらぬによって、用の残っている方は用達しに出られるのも御勝手だが、当家は一党の集合所になっていることでもあり、かたがた晩《おそ》くとも子《ね》の刻までにはここへ戻ってきているようにしてもらいたい。拙者はこれからこの旨を伝えるために、両国米沢町の養父の宅まで参るが、約束の
前へ
次へ
全127ページ中105ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森田 草平 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング