こ》氏の研究によると、東京で最も雷雨の多いのは杉並《すぎなみ》のあたりであると云う。わたしの知る限りでも、東京で雷雨の多いのは北|多摩《たま》郡の武蔵野町から杉並区の荻窪《おぎくぼ》、阿佐ヶ谷《あさがや》のあたりであるらしい。甲信《こうしん》盆地で発生した雷雲が武蔵野の空を通過して、房総《ぼうそう》の沖へ流れ去る。その通路があたかも杉並辺の上空にあたり、下町方面へ進行するにしたがって雷雲も次第に稀薄になるように思われる。但し俗に「北鳴り」と称して、日光《にっこう》方面から押し込んで来る雷雲は別物である。[#地付き](昭和11・7「サンデー毎日」)
[#改ページ]





 去年の十月頃の新聞を見た人々は記憶しているであろう。日本橋蠣殻町《にほんばしかきがらちょう》のある商家の物干へ一羽の大きい鳶《とび》が舞い降りたのを店員大勢が捕獲して、警察署へ届け出たというのである。ある新聞には、その鳶の写真まで掲げてあった。
 そのとき私が感じたのは、鳶という鳥がそれほど世間から珍しがられるようになった事である。今から三、四十年前であったら、鳶なぞがそこらに舞っていても、降りていても、誰も見返
前へ 次へ
全408ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング