人は足がすくみますよ。」
成程そうかも知れません。第二第三の石門をくぐり抜ける間は、わたしも少しく不安に思いました。みんなも黙って歩きました。もし誤まってひと足踏みはずせば、わたしもこの紀行を書くの自由を失ってしまわなければなりません。第四の石門まで登り詰めて、武尊岩《ぶそんいわ》の前に立った時には、人も我れも汗びっしょりになっていました。日本武尊《やまとたけるのみこと》もこの岩まで登って来て引っ返されたと云うので、武尊岩の名が残っているのだそうです。そのそばには天狗の花畑というのがあります。いずこの深山《みやま》にもある習いで、四季ともに花が絶えないので此の名が伝わったのでしょう。今は米躑躅《こめつつじ》の細かい花が咲いていました。
日本武尊にならって、わたしもここから引っ返しました。当人がしいて行きたいと望めば格別、さもなければ妄《みだ》りにこれから先へは案内するなと、警察から案内者に云い渡してあるのだそうです。
下山《げざん》の途中は比較的に楽でした。来た時とは全く別の方向を取って、水の多い谷底の方へ暫《しばら》く降って行きますと、さらに草や木の多い普通の山路に出ました。ど
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