いました。高さ十|丈《じょう》に近いとか云います。見聞の狭いわたしは、はじめてこういう自然の威力の前に立ったのですから、唯あっ[#「あっ」に傍点]と云ったばかりで、ちょっと適当な形容詞を考え出すのに苦しんでいるうちに、かの七人連れも案内者も先に立ってずんずん行き過ぎてしまいます。私もおくれまいと足を早めました。案内者をあわせて十人の人間は、鯨《くじら》に呑まれる鰯《いわし》の群れのように、石門の大きな口へだんだんに吸い込まれてしまいました。第一の石門を出る頃から、岩の多い路はいちじるしく屈曲して、あるいは高く、あるいは低く、さらに半月形をなした第二の石門をくぐると、蟹《かに》の横這いとか、釣瓶《つるべ》さがりとか、片手繰りとか、いろいろの名が付いた難所に差しかかるのです。なにしろ碌々《ろくろく》に足がかりも無いような高いなめらかな岩の間を、長い鉄のくさりにすがって降りるのですから、余り楽ではありません。案内者はこんなことを云って嚇《おど》しました。
「いまは草や木が茂っていて、遠い谷底が見えないからまだ楽です。山が骨ばかりになってしまって、下の方が遠く幽《かす》かに見えた日には、大抵な
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