んなに陰った日でも、正午前後には一旦明るくなるのだそうですが、今日はあいにくに霧が晴れませんでした。面白そうに何か騒いでいる、かの七人連れをあとに残して、案内者と私とは霧の中を急いで降りました。足の方が少しく楽になったので、わたしはまた例のおしゃべりを始めますと、案内者もこころよく相手になって、帰途《かえり》にもいろいろの話をしてくれました。その中にこんな悲劇がありました。
「旦那は妙義神社の前に田沼《たぬま》神官の碑というのが建っているのをご覧でしたろう。あの人は可哀そうに斬《き》り殺されたんです。明治三十一年の一月二十一日に……。」
「どうして斬られたんだね。」
「相手はまあ狂人ですね。神官のほかに六人も斬ったんですもの。それは大変な騒ぎでしたよ。」
 妙義町ひらけて以来の椿事《ちんじ》だと案内者は云いました。その日は大雪の降った日で、正午を過ぎる頃に神社の外で何か大きな声を出して叫ぶ者がありました。神官の田沼|万次郎《まんじろう》が怪しんで、折柄そこに居合せた宿屋の番頭に行って見て来いと云い付けました。番頭が行って見ると、ひとりの若い男が袒《はだ》ぬぎになって雪の中に立っているの
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