来ました。草鞋はだんだんに重くなりました。
「旦那、気をおつけなさい。こういう陰った日には山蛭《やまびる》が出ます。」
「蛭が出る。」
 わたしは慌てて自分の手足を見廻すと、たった今、ひやりとしたのは樹のしずくばかりではありませんでした。普通よりはやや大きいかと思われる山蛭が、足袋と脚絆との間を狙って、左の足首にしっかりと吸い付いていました。吸い付いたが最後、容易に離れまいとするのを無理に引きちぎって投げ捨てると、三角に裂けた疵口《きずぐち》から真紅《まっか》な血が止め度もなしにぽとぽと[#「ぽとぽと」に傍点]と流れて出ます。
「いつの間にか、やられた。」
 こう云いながらふと気が付くと、左の腕もむずむずするようです。袖をまくって覗いて見ると、どこから這い込んだのか二の腕にも黒いのがまた一匹。慌てて取って捨てましたが、ここからも血が湧いて出ます。案内者の話によると、蛭の出るのは夏季の陰った日に限るので、晴れた日には決して姿を見せない。丁度きょうのような陰ってしめった日に出るのだそうで、わたしはまことに有難い日に来合せたのでした。
 なにしろ血が止まらないのには困りました。見ているうちに
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