ない足取りで其の後を追いましたが、草鞋はぬれていい加減に重くなりました。
 水の音をうしろに聞きながら、案内者はまた話し出しました。維新前の妙義町は更に繁昌したものだそうで、普通の中仙道は松井田から坂本《さかもと》、軽井沢《かるいざわ》、沓掛《くつかけ》の宿々《しゅくじゅく》を経て追分《おいわけ》にかかるのが順路ですが、そのあいだには横川《よこかわ》の番所があり、碓氷《うすい》の関所があるので、旅人の或る者はそれらの面倒を避けて妙義の町から山伝いに信州の追分へ出る。つまり此の町が関の裏路になっていたのです。山ふところの夕暮れに歩み疲れた若い旅人が青黒い杉の木立《こだち》のあいだから、妓楼の赤い格子を仰ぎ視た時には、沙漠でオアシスを見いだしたように、かれらは忙《いそ》がわしくその軒下に駈け込んで、色の白い山の女に草鞋の紐《ひも》を解かせたでしょう。
「その頃は町もたいそう賑やかだったと、年寄りが云いますよ。」
「つまり筑波《つくば》の町のような工合だね。」
「まあ、そうでしょうよ。」
 霧はいよいよ深くなって、路をさえぎる立木の梢《こずえ》から冷たい雫《しずく》がばらばらと笠の上に降って
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