で、修善寺町の方を見おろして立っている。あたりには杉や楓《かえで》など枝をかわして生い茂って、どこかで鴉《からす》が啼《な》いている。
すさまじいありさまだとは思ったが、これに較べると、範頼の墓は更に甚だしく荒れまさっている。叔父御よりも甥《おい》の殿の方がまだしもの果報があると思いながら、香を手向《たむ》けて去ろうとすると、入れ違いに来て磬《けい》を打つ参詣者があった。
帰り路で、ある店に立ってゆで栗を買うと実に廉《やす》い。わたしばかりでなく、東京の客はみな驚くだろうと思われた。宿に帰って読書、障子の紙が二ヵ所ばかり裂けている。眼に立つほどの破れではないが、それにささやく風の音がややもすれば耳について、秋は寂しいものだとしみじみ思わせるうちに、宿の男が来て貼りかえてくれた。向う座敷は障子をあけ放して、その縁側に若い女客が長い洗い髪を日に乾かしているのが、榎《えのき》の大樹を隔ててみえた。
午後は読書に倦《う》んで肱枕《ひじまくら》を極《き》めているところへ宿の主人が来た。主人はよく語るので、おかげで退屈を忘れた。
きょうも水の音に暮れてしまったので、電燈の下《もと》で夕飯を
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