察せられた。宿に帰って朝飯の膳にむかうと、鉢にうず高く盛った松茸に秋の香が高い。東京の新聞二、三種をよんだ後、頼家《よりいえ》の墓へ参詣に行った。
 桂橋を渡り、旅館のあいだを過ぎ、的場《まとば》の前などをぬけて、塔の峰の麓に出た。ところどころに石段はあるが、路は極めて平坦で、雑木《ぞうき》が茂っているあいだに高い竹藪がある。槿《むくげ》の花の咲いている竹籬《たけがき》に沿うて左に曲がると、正面に釈迦堂がある。頼家の仏果《ぶっか》円満を願うがために、母|政子《まさこ》の尼が建立《こんりゅう》したものであると云う。鎌倉《かまくら》の覇業を永久に維持する大いなる目的の前には、あるに甲斐《かい》なき我が子を捨て殺しにしたものの、さすがに子は可愛いものであったろうと推し量ると、ふだんは虫の好かない傲慢《ごうまん》の尼将軍その人に対しても、一種同情の感をとどめ得なかった。
 さらに左に折れて小高い丘にのぼると、高さ五尺にあまる楕円形の大石に征夷大将軍|源左金吾《げんさきんご》頼家尊霊と刻み、煤《すす》びた堂の軒には笹龍胆《ささりんどう》の紋を打った古い幕が張ってある。堂の広さはわずかに二坪ぐらい
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