伴って、大地震のような地響きがするばかりか、真青《まっさお》な電光が昼のように天地を照らすので、戦争に慣れている私たちも少なからず脅《おびや》かされた。

     東京陵

 遼陽の城外に東京陵《トンキンりょう》という古陵がある。昔ここに都していた遼《りょう》(契丹《きったん》)代の陵墓で、周囲には古木がおいしげって、野草のあいだには石馬や石羊の横たわっているのが見いだされる。
 伝えていう、月夜雨夜にここを過ぎると、凄麗の宮女《きゅうじょ》に逢うことがある。宮女は笛を吹いている。その笛の音《ね》にひかれて、宮女のあとを慕って行くものは再び帰って来ないという。シナの小説にでもありそうな怪談である。
 わたしはそれを宿舎の主人に聞きただすと、その宮女は夜ばかりでなく、昼でも陰った日には姿をあらわすことがあると云う。ほんとうに再び帰って来ないのかと念を押すと、そう云って置く方が若い人たちの為であろうと、主人は意味ありげに笑った。
 その笑い顔をみて、わたしも覚った。そんな怖ろしい宮女ならば尋ねに行くのは止めようと云うと、
「好的《ハオデー》」と、主人はまた笑った。[#地付き](昭和7・6
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