しゃ》たる姿であった。
 兄は首にかけている箱から二匹の黒と青との蛇を取出して、手掌《てのひら》の上に乗せると、弟は一種の小さい笛を吹く。兄は何か歌いながら、その蛇を踊らせるのである。踊ると云っても、二匹が絡み合って立つぐらいに過ぎないのであるが、何という楽器か知らないが悲しい笛の音、何という節か知らないが悲しい歌の声、わたしは云い知れない凄愴《せいそう》の感に打たれて、この蛇つかいの兄弟は蛇の化身ではないかと思った。

     雨

 満洲は雨季以外には雨が少ないと云われているが、わたしが満洲に在るあいだは、大戦中のせいか、ずいぶん雨が多かった。
 夏季は夕立めいた雨にもしばしば出逢った。俄雨《にわかあめ》が大いに降ると、思いもよらない処に臨時の河が出来るので、交通に不便を来たすことが往々ある。臨時の河であるから知れたものだと、多寡《たか》をくくって徒渉《としょう》を試みると、案外に水が深く、流れが早く、あやうく押し流されそうになったことも再三あった。何が捕れるか知らないが、その臨時の河に網を入れている者もある。
 遼陽の南門外に宿っている時、宵《よい》から大雨、しかも激しい雷鳴が
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