毒虫は絶滅させなければなるまい。
蝎は敵に囲まれた時は自殺する。おのが尻尾《しっぽ》の剣先をおのが首に突き刺して仆《たお》れるのである。動物にして自殺するのは、恐らく蝎のほかにあるまい。蝎もまた一種の勇者である。
水
満洲の水は悪いというので、軍隊が基地点へゆき着くと、軍医部では直ぐにそこらの井戸の水を検査して「飲ムベシ」とか「飲ムベカラズ」とか云う札《ふだ》を立てることになっていた。
私が海城村落の農家へ泊まりに行くと、あたかも軍医部員が検査に来て、家の前の井戸に木札を立てて行くところであった。見ると、その札に曰く「人馬飲ムベカラズ」
人間は勿論、馬にも飲ませるなと云うのである。これは大変だと思って、呼びとめて訊くと、「あんな水は絶対に飲んではいけません」という返事である。この暑いのに、眼の前の水を飲むことが出来なくては困ると、わたしはすこぶる悲観していると、それを聞いて宿の主人は声をあげて笑い出した。
「はは、途方もない。わたしの家はここに五代も住んでいます。私も子供のときから、この井戸の水を飲んで育って来たのですよ。」
今更ではないが「慣れ」ほど怖ろしいも
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