のか知らないが、見るところ、まさに描ける龍である。
龍を信ずる満洲人が「龍!」と叫ぶのも無理はないと、私は思った。
蝎
南京虫は日本にもたくさん輸入されているから、改めて紹介するまでもないが、満洲の夏において最も我々をおびやかしたものは蝎《さそり》であった。南京虫を恐れない満洲の民も、蝎と聞けば恐れて逃げる。
蝎も南京虫とおなじく、人家の壁の崩れや、柱の割れ目などに潜《ひそ》んでいる。時には枯草などをたばねた中にも隠れている。しかも南京虫とは違って、その毒は生命に関する。私はある騎兵が右手の小指を蝎に螫《さ》されて、すぐに剣をぬいてその小指を切断したのを見た。
蝎の毒は蝮《まむし》に比すべきものである。殊に困るのは、その形が甚だ小さく、しかも人家の内に棲息《せいそく》していることである。蝎の年を経たものは大きさ琵琶《びわ》の如しなどと、シナの書物にも出ているが、そんなのは滅多にあるまい。私の見たのは、いずれもこおろぎ[#「こおろぎ」に傍点]ぐらいであった。
土地の人は格別、日本人が蝎に襲われたという噂を、近来あまり聞かないのは幸いである。満洲開発と共に、こういう
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