顔をみると、莨をやることにしていたが、二、三回の後に兄はことわった。
大人《たいじん》の莨の乏しいことは私たちも知っていると、彼は云うのである。実際、戦地では莨に不自由している。彼はさらに片言《かたこと》の日本語で、こんな意味のことを云った。
「管理部の人、みな莨に困っています。この莨、わたくしに呉れるよりも、管理部の人にやってください。」
私は無言でその顔をながめた。勿論、多少のお世辞もまじっているであろうが、苦力の口から斯《こ》ういう言葉を聞こうとは思わなかったのである。これまでとかくに彼らを侮《あなど》っていたことを、私は心ひそかに恥じた。
金州の母が病気だという知らせを聞いて、王の兄弟は暇《ひま》を取って郷里に帰った。帰る時に、兄も暇乞《いとまご》いに来たが、兄は特に私にむかって、大人はからだが弱そうであるから、秋になったらば用心しろと注意して別れた。
王福の次に雇われて来たのが、高秀庭である。高は苦力の本場の山東《さんとう》省の生まれであるが、年は二十二歳、これまで上海《シャンハイ》に働いていたそうで、ブロークンながらも少しく英語を話すので調法であった。これも極めて柔
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