て、われわれ一行七人の炊事から洗濯その他の雑用を、何から何まで彼一人で取《とり》り賄《まかな》ってくれた。
彼は煙草《たばこ》をのむので、私があるとき菊世界という巻莨《まきたばこ》一袋をやると、彼は拝して受取ったが、それを喫《の》まなかった。自分の兄は日本軍の管理部に雇われているから、あしたの朝これを持って行ってやりたいと云うのである。われわれの宿所から管理部までは十町ほども距《はな》れている。彼は翌朝、忙がしい用事の隙《すき》をみて、その莨を管理部の兄のところへ届けに行った。
それから二、三日の後、私が近所を散歩していると、彼は他の苦力と二人づれで、路《みち》ばたの露店の饅頭《まんとう》を食っていたが、私の姿をみると直《す》ぐに駈けて来た。連れの苦力は彼の兄であった。兄は私にむかって、丁寧に先日の莨の礼を述べた。いかに相手が苦力でも、一袋の莨のために兄弟から代るがわるに礼を云われて、私はいささか極まりが悪かった。
その後、注意して見ると、彼は時どきに兄をたずねて、二人が連れ立って何か食いに行くらしい。どちらが金を払うのか知らないが、兄弟仲のいいことは明らかに認められた。私は兄の
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