妹を励ますように言った。
「そうして、そのお金はどうするのです」と、お光は不安らしく訊いた。
「どうするといって、主人に我慢してもらうよりほかはない。勿論、こっちが償《つぐの》うことが出来ればいうまでもないが、いまの身分で二十両はおろか、十両の工面《くめん》も付こう筈がない、つまりはこっちも災難、主人も災難とあきらめて貰うよりほかはない。さあ、遅くなっては悪い。ともかくも一緒に行こう」
「はい」と、お光はまだ躊躇していた。
年の若い正直な彼女は、主人に二十両の損をかけるというのが如何《いか》にも済まないことのように思われてならなかった。とても出来ない相談とは知りながら、彼女はどうにかその金の工面は付くまいかと言った。
「いっそ八橋さんに相談して見たら」と、彼女はしまいにこんな事までほのめかした。
栄之丞は厭な顔をして取り合わなかった。努めて八橋に遠ざかろうとしている矢先きに、こんな相談を彼女のところへ持って行きたくなかった。ここでいつまでも評議をしていても果てしがない。ともかくも主人に逢った上でまた分別の仕様もあろう。案じるよりも産むが易いの譬《たと》えで、思いのほかに主人がこころ
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