草の方へとぼとぼと歩き出したが、馬道《うまみち》の角まで来てまた立ち停まった。どう考えてもこのまま主人の家へは帰りにくかった。ともかくも兄に相談して、その上で又なんとか仕様もあろうかと、彼女は果敢《はか》ないことを頼みにして、雪のますます降りしきる中を傘もささずに大音寺前へ訪ねて来たのであった。
「困ったことになった」
 栄之丞もその話を聴いて吐胸《とむね》をついた。まだ新参の身、殊に年のゆかない妹がこんな粗相《そそう》をしでかしては、主人におめおめ[#「おめおめ」に傍点]と顔を向けられまい。時の災難とはいいながら飛んだことになったと、彼も同じく途方に暮れてしまった。しかし今さら妹を叱ったとて始まらない。これから主人のところへ妹を連れて行って、よくその事情を話して謝まるよりほかはあるまいと思った。幸いにお内儀さんはいい人でもあり、新参ながらお光に眼をかけてくれるとも聞いているから、こっちが正直に訳を言ってひたすら詫び入ったらば、さのみむずかしいことも言うまいかとも想像された。
「どうも仕方がない。これから橋場《はしば》へ一緒に行って、わたしから主人によく詫びてやろう」と、彼は泣いている
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