まいか、分別がまだ確かに決まらないからであった。
田楽豆腐と香の物で彼はさびしく酒を飲んでいた。今夜に限って、吉原へ行くのがなんだか気が進まなかった。八橋から又ぞろ身請け話を持ち出されるのが何分つらいからであった。
「おれは男らしくない」
こう思いながらも、彼は八橋の前で何もかも男らしく白状する勇気がなかった。八橋がどれほどに自分を思っていてくれるか、実はその見当がはっきり付いていないからであった。八橋は自分を嫌っていないものと彼は信じていた。しかしどれほどに自分を愛しているか、その寸法を測るべき物指しを彼はもっていなかった。自分が故郷を立ち退いて、今は一種の無宿者同様になっていることを知ったあかつきに、八橋はどんな態度を取るか。それは彼にも確かな想像はつかなかった。
もし八橋が心底《しんそこ》から自分を思っていてくれるとしたら、彼は今更こんなことを言い出して、彼女の心を傷つけるに忍びなかった。もし又それほどに自分を思っていないとしたら、なまじいのことを言い出して、彼女の冷たい心の底を見せつけられるのも怖ろしかった。彼は男らしくないということを十分に意識していながらも、八橋に対し
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