んだ。それは確かに頼みました。しかし佐野の身代の潰れたことまで吹聴《ふいちょう》して貰おうとは思わなかった。そこに念を押して置かなかったのが私の手落ちであったが、わたしはただ何と付かずにお前さんから八橋を請け出して、こっちへ渡して貰おうと思っていたのだ。それは手前勝手に相違ない。わたしもそれを百も承知しているから、大《だい》の男が手をさげてお頼み申したのだ。否《いや》なら否だと何故《なぜ》きっぱり断わっておくんなさらない。愚痴を言うようだが、わたしは恨みに思いますよ」
 恨まれては迷惑である。なんだか怖ろしくもある。栄之丞も一応の言い訳をしないではいられなかった。
「いや、お言葉ではございますが、当節のわたくしに何百両という金の才覚の届こう筈はございません。それは八橋もよく知っております。金の出どころ、身請け人の身許を正直に打明けませんでは、とても得心いたすまいと存じまして……」
「それはよろしい。判っています。身請けの相手が次郎左衛門ということを隠して下さるには及ばない。しかし次郎左衛門の身代の潰れたことまでは……。いや、それもどうで遅かれ早かれ知れることで、秘し隠しにしようとするの
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