ながら、今までは確かな証拠もなかったが、きょうの話の様子を見るとまさしく彼に相違ない。うわべはおとなしく素直に受け合って置きながら、陰《かげ》へ廻って執念ぶかく他に祟《たた》ろうという彼は、まるで蛇のような奴である。蛇ならば蛇でいい、おれが踏み殺してやると、次郎左衛門は抑え切れない憤りの胸を畳んで、つかつかとここへ踏ん込んで来たのであった。
「栄之丞さん。このあいだは失礼をいたしました」と、次郎左衛門は彼のそばへむず[#「むず」に傍点]と坐って、まず挨拶した。
 思いがけなく次郎左衛門に出られて、栄之丞も少しあわてた。居住居《いずまい》を直して、ともかくも一と通りの挨拶をした。
「まあ、ここではお話もできません。なにしろわたくしの座敷へ……」
 無理に誘われて栄之丞も仕方なしに座を起って行った。八橋もあとにつづいた。

     十三

「さて、栄之丞さん。何もかもよく正直に言って下すった。花魁もびっくりしたろう。次郎左衛門の身代は潰れてしまったのだ。なんどき乞食になるかも知れないのだ」
 酒に酔っていながらも、次郎左衛門の顔は蒼くなっていた。
「わたしはお前さんに親許身請けのことを頼
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