ように、お里は自分の頼りない身の上を語り出した。親ひとり子ひとりでほかには力になってくれる身寄りもないと、彼女は訴えるように言った。殊に母は病身であるから、いつどんな悲しいことが落ちかかって来るかも知れないなどと、心細いように言った。
話はいよいよ沈んで行った。
うす暗い心持ちでお絹の家を出た林之助は、ここで又こんな滅入った話を聞かされるのは辛かった。彼は陽気に冗談の一つも言って見たかった。店にいる時もおとなしいという評判の娘ではあるが、自分と二人ぎりの場合はいよいよおとなしい、むしろ陰気なくらいに沈んでいるのが、林之助にはなんだか物足らなかった。しかし、いかにおとなしいと言っても、もともとが水茶屋《みずぢゃや》の女である以上、ひと通りのお世辞や冗談ぐらいが言えないのではない。それが自分に対してはいつもまじめ過ぎるほど堅気らしく附き合っているのは、さすがに通り一遍の客とも思っていないのであろうかというような、一種のうぬぼれも林之助をそそのかした。又そればかりでなく、心の弱い彼としては、こうした涙の多い話はうわの空で聞き流していることは出来なかった。彼は次第にその話の底の方まで引き入
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