両国の秋
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)お絹《きぬ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)若|粧《づく》り
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「ころもへん+上」、第4水準2−88−9]
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一
「ことしの残暑は随分ひどいね」
お絹《きぬ》は楽屋へはいって水色の※[#「ころもへん+上」、第4水準2−88−9]※[#「ころもへん+下」、第4水準2−88−10]《かみしも》をぬいだ。八月なかばの夕日は孤城を囲んだ大軍のように筵張《むしろば》りの小屋のうしろまでひた寄せに押し寄せて、すこしの隙《すき》もあらば攻め入ろうと狙っているらしく、破れた荒筵のあいだから黄金《こがね》の火箭《ひや》のような強い光りを幾すじも射《い》込んだ。その箭をふせぐ楯のように、古ぼけた金巾《かなきん》のビラや、小ぎたない脱ぎ捨ての衣服《きもの》などがだらしなく掛かっているのも、狭い楽屋の空気をいよいよ暑苦しく感じさせたが、
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