もあるめえ。おらあもっと悪いことをしたのかと思った」と、林之助は少し皮肉らしく笑った。
「なんとでも言うがいいのさ」と、お絹も寂しく笑っていた。
お君が羊羹《ようかん》を切って菓子皿に盛って来た。それはけさ両国の小屋|主《ぬし》から見舞いによこしたのだと言った。羊羹をつまみながら林之助は枕もとの古い屏風をながめた。林之助がまだここにいる頃に粗相で一カ所破いたので、なにか切貼《きりば》りをするものはないかと、彼は近所の絵草紙屋へ行って探した末に、鬼の念仏の一枚絵を買って来て貼り付けた。夜泣きの呪《まじな》いじゃあるまいしと、お絹は思わず噴き出したことがあった。
その一枚の絵は煤《すす》びたままで今も屏風に貼り付けてある。林之助に取ってはこれも懐かしい思い出の一つであった。
彼はここへ身を寄せてからの小一年のあいだの出来事を、それからそれへと思いうかべた。そうして、自分の眼の前に悩ましげに坐っているお絹の衰えた姿を悼《いた》ましく眺めた。その妖艶のおもかげはきのうに変らないが、僅か見ないうちに小鼻の肉が落ちて、頬が痩せて、水のような色をしている顔の寂しさが眼に立った。それと同時に、ま
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