い姿が浮き出した。林之助は白地の寝衣《ねまき》を着ていた。
「林さん」
声をかけて寄ろうとするお絹を、男は押し戻すようにして門の外へ出た。ふたりは長屋の窓下を流れている小さい溝《どぶ》のふちに立った。溝の石垣のなかに、こおろぎがさびしく鳴いていた。
「おい、どうしたんだ。今時分こんなところへやって来て……」と、林之助は小声で叱るように言った。
「お前さんに逢いたくって……」
「馬鹿」と、林之助はまた叱った。
武家奉公の林之助が両国の蛇つかいに馴染みがあるなどということは、もちろん秘密にしなければならない。どんなことがあっても屋敷へ訪ねて来てはならないと、かねて固く言い含めてあるのに、夜中だしぬけに御門を叩いて自分をよび出しに来るとは、あんまり遠慮がなさ過ぎると、林之助は呆れて腹が立った。
「どうで馬鹿ですから堪忍してください。あたし、今夜はどうしてもお前さんに逢いたくって、逢いたくって……」
その酒臭い息と、もつれた舌とで、女がひどく酔っているのを林之助は早くも覚った。なまじいここでぐずぐず言っているよりも、だまして早く追い返した方が無事らしいと気がついて、彼はそこに待っている駕
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